お子さんがハマっている「Roblox」の正体:スタートアップ分析で読み解く3億8,000万人プラットフォームの成長戦略
はじめに:子供から「Roblox」と聞いて、このページにたどり着いたお父さんへ
「ねえ、Robloxで遊んでいい?」
お子さんからこの言葉を聞いて、「Robloxって何だ?」と検索してこのページにたどり着いた方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、Robloxは単なる「ゲーム」ではありません。2024年末〜2025年にかけて世界で約3億8,000万人規模の月間アクティブユーザーを抱え、ニューヨーク証券取引所に上場している、数百億ドル規模の時価総額を持つテクノロジー企業が運営するプラットフォームです。
この記事では、お子さんが夢中になっている「Roblox」を、スタートアップ企業の成長分析という視点から解説します。
本記事で使う「スタートアップサイエンス」とは、田所雅之氏の著書「起業の科学」を元に体系化された、スタートアップの成功パターンを分析するフレームワークの総称です。PSF(課題と解決策の適合)、PMF(製品と市場の適合)、MOAT(競争優位性)、フライホイール(成長の自己強化サイクル)などの概念を使って、なぜ企業が成長するのかを分析します。
読み終わる頃には、お子さんとの会話のネタになるだけでなく、ご自身の勤務先や経営されている会社での新規事業開発にも応用できる視点を得ていただけるはずです。
第1章:Robloxの正体を3分で理解する
ゲームではなく「プラットフォーム」
まず最初に理解すべき重要な点があります。Robloxは「ゲーム」ではなく「プラットフォーム」です。
例えるなら、Robloxは「ゲームのYouTube」です。YouTubeが動画を作る会社ではなく、ユーザーが動画を投稿・視聴するプラットフォームであるように、Robloxはゲームを作る会社ではなく、ユーザーがゲームを作り・遊ぶプラットフォームなのです。
お子さんが「Robloxで遊んでいる」と言うとき、その中身は4,000万以上の異なる「体験(ゲーム)」から選んでいます。鬼ごっこのようなシンプルなゲームから、都市建設シミュレーション、ロールプレイゲームまで、すべてユーザー(多くは10代の若者)が作ったコンテンツです。
数字で見るRoblox(2024年末〜2025年時点)
- 月間アクティブユーザー:約3億8,000万人規模
- 日間アクティブユーザー:約8,500万人規模
- プラットフォーム上のゲーム数:4,000万以上
- 開発者への年間支払額:約9億2,300万ドル(約1,400億円、2024年)
- 上場時の企業評価額:約400億ドル超(2021年3月時点)
複数の調査や企業発表によれば、米国の16歳未満の約半数がRobloxユーザーと言われています。日本でもとても人気でお子さんの周りの友達も、おそらく多くがRobloxで遊んでいるでしょう。
第2章:創業者の「課題発見力」と教育ソフトからの「ピボット」(1989年-2004年)
スタートアップサイエンスの原則:すべては「課題発見」から始まる
スタートアップの成功は、「どれだけ優れたソリューションを作れるか」ではなく、「どれだけ本質的な課題を発見できるか」で決まります。これはスタートアップサイエンスの最も重要な原則の一つです。
Robloxの創業者デイビッド・バズッキは、1989年に「Interactive Physics」という教育用物理シミュレーションソフトウェアを開発していました。学校で使われる教育ツールとして、ユーザーが物理法則に基づいた環境で自由に実験できるソフトです。
このソフトウェアは教育市場で一定の成功を収めましたが、バズッキは重要な「気づき」を得ます。
ユーザーは、与えられたシミュレーションを使うだけでなく、自分で何かを「創造」したがっている。
本来は物理の学習ツールとして設計されたソフトウェアで、ユーザーたちは想定外の「創造的な遊び」を始めていたのです。
教育ソフトからエンターテインメントへの「ピボット」
スタートアップサイエンスでは、当初の事業計画を大きく転換することを「ピボット」と呼びます。Instagram(当初は位置情報共有アプリ「Burbn」)、Slack(当初はゲーム開発会社)、YouTube(当初は出会い系サイト)など、多くの成功企業がピボットを経験しています。
バズッキが経験したのも、まさにこのピボットでした。
元々のビジョン: 物理を学ぶための教育ツール
ピボット後のビジョン: ユーザーが自分の世界を創造し、共有できるプラットフォーム
この転換は、「教育」という市場から「エンターテインメント」という巨大市場への移動を意味しました。
フレームワーク:「真の課題」の発見
スタートアップサイエンスでは、表面的な課題ではなく「真の課題」を発見することが重要とされます。バズッキが発見した真の課題は以下のようなものでした。
表面的な課題: 「面白いゲームがない」
真の課題: 「自分で何かを創り、それを他の人に遊んでもらいたい」
この「創造欲求」と「承認欲求」の組み合わせこそが、Robloxが解決しようとした本質的な課題でした。
【新規事業開発への示唆】
お子さんの話をきっかけにこの記事を読んでいるお父さんの中には、会社で新規事業開発に携わっている方もいるかもしれません。Robloxの創業ストーリーから学べることは明確です。
「想定外の使われ方」に注目せよ
自社製品やサービスが、想定と異なる使われ方をしていないか?その「想定外の使われ方」こそが、新しい市場を発見するヒントかもしれません。バズッキは教育ソフトのユーザーが「創造的な遊び」をしているのを見て、エンターテインメント市場へのピボットを決断しました。
第3章:PSF(Problem Solution Fit)の達成(2004年-2007年)
創業:2人のエンジニアと1つのビジョン
2004年3月23日、デイビッド・バズッキとエリック・カッセルは、カリフォルニア州メンロパークでRoblox Corporationを設立しました。
最初のプロジェクト名は「DynaBlocks」。ユーザーが3Dブロックを使って物理的な相互作用をシミュレートできるプラットフォームでした。2005年に「robots(ロボット)」と「blocks(ブロック)」を組み合わせた「Roblox」に改名されます。
MVP(Minimum Viable Product)の考え方
スタートアップサイエンスでは、最初から完璧な製品を作るのではなく、「最小限の機能で価値を検証できる製品(MVP)」を素早くリリースすることが推奨されます。
初期のRobloxはまさにMVPそのものでした。
- プレイヤーのアバターアニメーションもなし
- 機能は最も簡潔な形でしか存在しない
- バズッキとカッセル自身がゲームを作って検証
2006年9月1日、Robloxはベータ版として一般公開されました。同年、開発環境「Roblox Studio」も公開され、ユーザーがゲームを作れるようになりました。
重要な意思決定:「プラットフォーム専業」への決断
2008年、Roblox Corporationは重要な戦略的決断を下します。
「企業として独自のゲームを作ることを中止し、プラットフォーム提供者としての役割に徹する」
これは非常に勇気のいる決断でした。なぜなら、プラットフォームの成功は完全にユーザーコミュニティの創造性に依存することになるからです。
しかし、この決断が後のRobloxの急成長を支える基盤となりました。これも一種のピボットと言えます。「自社でコンテンツを作る会社」から「プラットフォームを提供する会社」への転換です。
【新規事業開発への示唆】
「自分たちでやる」vs「プラットフォームを作る」の選択
新規事業を検討する際、多くの企業は「自社でサービスを提供する」ことを前提にします。しかし、Robloxのように「ユーザーがサービスを作る基盤を提供する」という選択肢もあります。
後者のアプローチは、スケーラビリティ(拡張性)が圧倒的に高くなります。Robloxが4,000万以上のゲームを「自社で開発する」ことは不可能ですが、「ユーザーに作ってもらう」ことで実現しています。
第4章:ビジネスモデルの構築とPMF(Product Market Fit)(2007年-2013年)
仮想経済の天才的設計
2007年5月14日、Robloxは独自の仮想通貨「Robux(ロバックス)」を導入しました。
お子さんが「Robux買って」と言ってきたことがあるかもしれません。このRobuxこそが、Robloxのビジネスモデルの核心です。
Robuxの仕組み:
- ユーザーが実際のお金でRobuxを購入
- Robuxでゲーム内アイテムやアクセス権を購入
- ゲーム開発者はRobuxを獲得
- 開発者はRobuxを実際のドルに換金可能(Developer Exchange:DevEx)
この設計の天才的な点は、「実際のドル額を抽象化」したことです。「500円払う」より「400 Robux使う」の方が、心理的ハードルが下がります。
PMF(Product Market Fit)の達成
スタートアップサイエンスでは、「顧客が本当に欲しがる製品」と「市場のニーズ」が合致した状態を「PMF(Product Market Fit)」と呼びます。
Robloxは2010年頃、明確にPMFを達成したと考えられます。
PMF達成の指標:
- 月間アクティブユーザーが100万人に到達(2010年)
- 子ども向けエンターテインメントサイトで第2位の人気(2011年)
- 月間アクティブユーザーが680万人に成長(2011年)
- 利益が前年比75%増加(2011年)
2013年:転機とクリエイター経済の確立
2013年、Robloxにとって重要な転機が訪れます。
Developer Exchange(DevEx)プログラムの導入により、開発者がRobuxを実際の米国ドルに換金できるようになりました。
これは単なる機能追加ではありません。Robloxを「遊ぶ場所」から「稼げる場所」へと変革する、ビジネスモデルの根本的な進化でした。
10代の若者が自分で作ったゲームで実際にお金を稼げる。この仕組みが、質の高いゲームを作ろうとする開発者のモチベーションを劇的に高めました。
同年、共同創業者のエリック・カッセルが脳がんで亡くなるという悲劇もありました。45歳でした。彼の追悼として、Roblox上に「Erik Cassel Memorial」というワールドが作られ、数百人のユーザーが集まりました。
【新規事業開発への示唆】
「稼げる仕組み」がエコシステムを作る
プラットフォームビジネスを成功させる鍵は、「参加者が稼げる仕組み」を設計することです。YouTubeが広告収益の分配を開始してから爆発的に成長したように、Robloxも「開発者が稼げる」DevExプログラムの導入後、質の高いコンテンツが急増しました。
自社の新規事業を検討する際、「誰が」「どうやって」稼げるのかを設計することは、持続可能なエコシステム構築の核心です。
第5章:MOAT(競争優位性)の構築
ネットワーク効果という最強の武器
スタートアップサイエンスでは、競合が簡単に真似できない「MOAT(堀)」を構築することが長期的成功の鍵とされます。
Robloxが構築したMOATの中で最も強力なのが「ネットワーク効果」です。
このサイクルが一度回り始めると、競合が追いつくのは非常に困難になります。なぜなら、新規参入者は「ユーザーがいないからゲームが集まらない」「ゲームがないからユーザーが集まらない」という「コールドスタート問題」に直面するからです。
フライホイール(成長の自己強化サイクル)
Robloxのビジネスモデルは、Amazonのジェフ・ベゾスが愛用した「フライホイール」の概念で説明できます。
Robloxのフライホイール:
- ユーザー体験の向上 → より多くのユーザーがプラットフォームに参加
- ユーザー増加 → より多くの開発者がRobloxでゲームを作る動機が生まれる
- 開発者増加 → より多様で質の高いゲームが生まれる
- ゲーム品質向上 → ユーザー体験がさらに向上
- (サイクルが加速)
このフライホイールが回り続ける限り、Robloxは成長し続けます。
【新規事業開発への示唆】
「ネットワーク効果」を設計に組み込む
新規事業を立ち上げる際、「ユーザーが増えれば増えるほど、サービスの価値が上がる」という構造を設計できるかどうかは、長期的な競争優位性を決定します。
逆に、ネットワーク効果がない事業は、資金力のある競合が参入すると簡単に追い抜かれてしまいます。
第6章:プラットフォーム戦略とモバイル展開(2012年-2016年)
マルチプラットフォーム展開
2012年以降、Robloxは急速にプラットフォームを拡大しました。
- 2012年:iOS版リリース
- 2012年:macOS版リリース
- 2014年:Android版リリース
- 2016年:VR(Oculus Rift)対応
この展開には明確な戦略がありました。「子どもがどこでもRobloxで遊べるようにする」ことです。
スマートフォンの普及により、子どもたちは「いつでもどこでもRobloxにアクセスできる」状態になりました。これがユーザーエンゲージメント(利用頻度・時間)を劇的に高めました。
TAM/SAM/SOMの視点
スタートアップサイエンスでは、市場規模を以下の3段階で分析します。
- TAM(Total Addressable Market):潜在的な最大市場規模
- SAM(Serviceable Addressable Market):実際にアプローチ可能な市場
- SOM(Serviceable Obtainable Market):現実的に獲得可能な市場
Robloxのケースをラフに試算すると:
| 市場 | 規模(ざっくりした仮置き) |
| TAM | 世界のゲーム市場(約2,000億ドル規模) |
| SAM | 子ども向けゲーム市場(仮に約500億ドルと見なすと) |
| SOM | UGCプラットフォーム利用者(仮に約100億ドル規模) |
※これらの数字はフレームワーク上の試算であり、厳密な統計値ではありません。
モバイル展開により、RobloxはSAM(子ども向けゲーム市場)全体にアプローチ可能になりました。
【新規事業開発への示唆】
「市場規模」の段階的な理解
新規事業の企画書で「市場規模」を語る際、「TAM(理論上の最大市場)」だけを提示するのは不十分です。「SAM(実際に狙える市場)」「SOM(初期に獲得できる市場)」を明確に区分し、どの順番で攻略していくかを示すことが、経営陣への説得力を高めます。
第7章:COVID-19という「ブラックスワン」(2020年)
パンデミックが生んだ爆発的成長
2020年、世界を襲ったCOVID-19パンデミックは、Robloxにとって予期せぬ「追い風」となりました。
成長数値の比較:
| 指標 | 2020年2月 | 2020年7月 | 成長率 |
| 月間アクティブユーザー | 約1億1,500万人 | 1億5,000万人超 | +30%以上 |
ロックダウンにより、子どもたちは学校に行けず、友達とも直接会えなくなりました。その結果、Robloxは「友達と遊ぶ場所」として急激に利用が増えました。
収益面でも、2020年の初め9ヶ月間で約5億8,900万ドルを計上。これは前年同期比で60%超の増加でした。
スタートアップサイエンスの視点:「運」と「準備」
この急成長は「運が良かった」のでしょうか?
スタートアップサイエンスでは、「運」は確かに重要ですが、「準備ができていなければ運を活かせない」とも言われます。
Robloxがパンデミックの恩恵を最大限に受けられたのは、それまでの15年間で以下の準備ができていたからです。
- マルチプラットフォーム対応(どのデバイスでもアクセス可能)
- スケーラブルなインフラ(急激なユーザー増加に対応可能)
- 成熟したクリエイター経済(質の高いゲームが揃っている)
- 強固なコミュニティ(ユーザー同士のつながり)
「準備ができている者に、チャンスは訪れる」という格言を体現した事例と言えます。
【新規事業開発への示唆】
「ブラックスワン」に備える
COVID-19のような予測不能な出来事(ブラックスワン)は、いつ起きるかわかりません。しかし、「何かが起きたときに対応できる基盤」を作っておくことは可能です。
スケーラブルなシステム設計、柔軟な組織体制、多様な収益源の確保などが、「ブラックスワンを味方にする」準備になります。
第8章:IPOと企業としての成熟(2021年以降)
ニューヨーク証券取引所への上場
2021年3月10日、Robloxはニューヨーク証券取引所(NYSE)に直接上場しました。取引記号は「RBLX」。
上場時点での企業評価額は約400億ドル超(当時の為替で約4〜5兆円)。2004年に2人のエンジニアが始めたプロジェクトが、17年で数兆円規模の評価を受ける企業になったのです。
(※時価総額は株価により日々変動します。現在の時価総額は証券情報をご確認ください。)
ブランドパートナーシップという新しい収益源
上場後、Robloxは大手ブランドとのパートナーシップを積極的に展開しています。
Nike「NIKELAND」 Nikeの実際の本社にインスピレーションを受けた仮想スポーツキャンパス。2022年後期までに2,600万以上の訪問を記録。
Gucci「Gucci Town」 高級ファッションブランドの仮想世界。限定版のデジタルGucci Dionysusバッグは、二次市場で数千ドル相当の価格で取引される事例が報道されました。
これらのパートナーシップは、Robloxに新しい収益源をもたらすと同時に、ブランドにとっても「Z世代・アルファ世代にリーチする」貴重な機会となっています。
【新規事業開発への示唆】
「プラットフォーム」は複数の収益源を生む
Robloxの収益源は、当初は「Robux販売」だけでしたが、現在は「ブランドパートナーシップ」「広告」「プレミアム会員」など多角化しています。
プラットフォームビジネスの強みは、基盤ができた後に様々な収益モデルを追加できることです。新規事業を検討する際、「初期の収益モデル」だけでなく「将来追加可能な収益モデル」も視野に入れると、投資判断がしやすくなります。
第9章:生成AI時代への対応(2023年-2025年)
AIによるクリエイター支援
2023年以降、Robloxは生成AIをプラットフォームに積極的に統合しています。
「Roblox Assistant」という会話型AIツールは、ゲーム開発者を以下のように支援します。
- 学習支援: 初心者でも自然言語で質問して回答を得られる
- コーディング支援: コードの改善、説明、デバッグをAIがサポート
- 構築支援: 「この道沿いに街灯を追加して」というプロンプトでプロトタイプを作成
2025年3月には、「Roblox Cube」という3D生成AIシステムも発表されました。2Dおよび3Dコンテンツの生成が可能になり、ゲーム開発のハードルがさらに下がっています。
スタートアップサイエンスの視点:継続的イノベーション
成功したスタートアップが陥りやすい罠は、「成功体験に固執して変化を拒むこと」です。
Robloxは、20年以上にわたって「ユーザーが創造できるプラットフォーム」という核心を維持しながら、技術トレンドに合わせて継続的に進化しています。
- 2010年代:モバイル対応
- 2016年:VR対応
- 2023年以降:生成AI統合
この「コアを守りながら変化に適応する」姿勢が、長期的な成功の鍵となっています。
【新規事業開発への示唆】
「コア」と「変化」のバランス
新規事業が軌道に乗った後も、技術トレンドや市場環境は変化し続けます。重要なのは、「事業のコア(本質的な価値)」を見極め、それを守りながら、「周辺の技術や手法」は柔軟に変化させることです。
Robloxのコアは「ユーザーが創造できること」。AIは、そのコアをより多くの人に開放するための手段として導入されています。
第10章:父親として知っておくべきこと
Robloxの安全性
お子さんがRobloxで遊ぶ際、安全面で知っておくべきことがあります。筆者がMinecraftより先にRobloxを息子に与えた理由として、以下のようなセーフティー機能が備わっているからです。ちなみにお小遣いもRobuxで与えることで幼稚園児の頃から安全に自分の好きな購買体験を行う事ができます。現金だと小さな子供が自由に買い物に繰り出すことは交通事故など大きなリスクがあると考えたからです。
Robloxのセーフティ機能:
- チャットフィルター(不適切な言葉の自動ブロック)
- 年齢に応じたコンテンツ制限(13歳未満は初期設定でより厳しい制限)
- 保護者管理機能(利用時間の制限、課金の制限など)
- 報告機能(不適切なコンテンツやユーザーの報告)
推奨される対策:
- お子さんのアカウント設定を確認する
- 課金の上限を設定する(Robux購入の制限)
- 定期的に「何のゲームで遊んでいるか」を聞いてみる
- 可能であれば、一度一緒に遊んでみる
Roblox公式の安全性ページ(日本語対応)で、詳細な設定方法を確認できます。
教育的な側面
Robloxには、単なる「遊び」を超えた教育的価値もあります。
プログラミング学習: Roblox Studioでは「Luau」というプログラミング言語を使います。お子さんがゲームを作りたいと言い出したら、それは立派なプログラミング学習の入り口です。
経済リテラシー: Roblox内の経済(Robuxの獲得、消費、換金)を通じて、お金の概念を学ぶ機会になります。
創造性の発揮: 「消費者」から「創造者」になる体験は、受動的にコンテンツを見るだけのメディアにはない価値があります。
まとめ:Robloxから学ぶスタートアップの成功法則
7つの成功要因と新規事業開発への応用
Robloxの成長から学べるスタートアップの成功法則と、それを自社の新規事業開発に応用するポイントをまとめます。
- 真の課題を発見する
- Roblox:人間の本質的な欲求(創造欲求、承認欲求)を捉えた
- 応用:自社製品の「想定外の使われ方」に注目し、隠れた課題を発見する
- 大胆にピボットする
- Roblox:教育ソフトからエンターテインメントへ、自社開発からプラットフォームへ
- 応用:当初の計画に固執せず、市場の反応に基づいて方向転換する勇気を持つ
- プラットフォーム戦略を採用する
- Roblox:自社でコンテンツを作るのではなく、ユーザーが作る仕組みを提供
- 応用:「自社でやる」だけでなく「他者に作ってもらう基盤を提供する」選択肢を検討
- ネットワーク効果を構築する
- Roblox:ユーザーと開発者の相互依存関係で競争優位性を確立
- 応用:「ユーザーが増えるほど価値が上がる」構造を設計に組み込む
- クリエイター経済を設計する
- Roblox:開発者が実際にお金を稼げる仕組み(DevEx)を整備
- 応用:エコシステムの参加者が「稼げる」仕組みを設計する
- 準備を怠らない
- Roblox:パンデミックという「大きな変化」を逆に活かせたのは、それまでの準備があったから
- 応用:スケーラブルな基盤を作り、予期せぬ機会に対応できる体制を整える
- 継続的にイノベーションする
- Roblox:コアを守りながら、VRや生成AIなど新技術を積極的に採用
- 応用:成功に安住せず、技術トレンドを取り込み続ける
最後に
お子さんが夢中になっている「Roblox」は、2人の起業家のビジョンから始まり、20年以上かけて約3億8,000万人が利用するプラットフォームに成長しました。
「ただのゲーム」と見るのではなく、「なぜこれだけ多くの人が使っているのか」「どんなビジネスモデルなのか」という視点で見ると、学ぶことが多いはずです。
この記事が、お子さんとの会話のきっかけになるだけでなく、ご自身のビジネスにも何かしらのヒントになれば幸いです。
お子さんとRobloxについて話すとき、「どんなゲームを作ってみたい?」と聞いてみてはいかがでしょうか。もしかすると、将来の起業家やプログラマーの芽が、そこにあるかもしれません。
次回は、「Roblox Assistant」を用いたバイブコーディングを、8才の男の子と体験する話を紹介したいと思います。
※この記事は、信濃ロボティクスイノベーションズ合同会社の開発するマルチAIアシスタント「secondbrain」を利用して執筆しています。
参考:Robloxの主要な歴史年表
| 年 | 出来事 |
| 1989年 | デイビッド・バズッキがInteractive Physics(教育用ソフト)を開発 |
| 2004年 | Roblox Corporation設立(DynaBlocksプロジェクト開始) |
| 2005年 | 「Roblox」に改名 |
| 2006年 | ベータ版公開、Roblox Studio公開 |
| 2007年 | Robux導入 |
| 2008年 | 自社ゲーム開発を中止、プラットフォーム専業へピボット |
| 2010年 | 月間100万ユーザー達成 |
| 2012年 | iOS/macOS版リリース |
| 2013年 | DevExプログラム開始、共同創業者エリック・カッセル逝去 |
| 2014年 | Android版リリース |
| 2016年 | VR対応、月間約3,000万ユーザー |
| 2020年 | COVID-19で急成長、月間1.5億ユーザー超 |
| 2021年 | NYSE上場(直接上場)、評価額約400億ドル超 |
| 2023年 | 生成AI(Roblox Assistant)統合開始 |
| 2024年末〜2025年 | 月間約3.8億ユーザー規模に到達、3D生成AI「Roblox Cube」発表 |




