マッキンゼーが特定した「AIに勝てる3つのスキル」と中小企業が今すぐ始めるべきこと
マッキンゼーのグローバルマネージング・パートナー(CEOに相当)であるボブ・スターンフェルズ氏が、2026年1月6日のCES(ラスベガス)で衝撃的な発表を行いました。
「マッキンゼーでは2万5000のAIエージェントが働いており、昨年だけで150万時間の作業を削減した」(Business Insider Japan、2026年1月13日)
4万人の人間と2万のAIエージェントが共存する組織。世界最高峰のコンサルティングファームが、すでにこのような体制で動いているのです。
では、私たち中小企業や地方自治体は、この流れにどう向き合えばよいのでしょうか。
答えは、同じ発表の中にありました。スターンフェルズ氏は「AIにはできない3つの人間スキル」を特定し、これこそが若手が磨くべき分野だと語ったのです。
「志を抱く能力」「判断力」「真の創造性」—AIには代替できない3つのスキル
スターンフェルズ氏が特定した3つのスキルは、以下の通りです。
- 志を抱く能力(The ability to aspire)
「AIモデルにできないことは何か? それは志を抱くこと。適切な志を定めることです」とスターンフェルズ氏は語りました。
「低軌道を目指すのか? 月を目指すのか? 火星を目指すのか? それを選択する能力は人間にしかないものです」
さらに重要なのは、志を抱く力に加えて「それをほかの人に信じてもらうスキル」を身につけるべきだと述べた点です。ビジョンを語り、チームを巻き込み、組織を動かす力。これはAIには代替できません。
- 判断力(Judgment)
「AIには正解も不正解もありません。では、どのような前提や基準を設定してAIを使うべきでしょうか?」
企業の価値観や社会的な規範といった要素を踏まえて、AIの使い方や判断の枠組みを決める力は、人間が担うべき領域です。
AIが出してきた複数の選択肢の中から、自社の状況や地域の文脈に合った判断を下すこと。これは経営者やリーダーにしかできない仕事です。
- 真の創造性(True Creativity)
「AIはあくまで推論モデルであって、次に最も可能性の高いステップを導き出すもの」とスターンフェルズ氏は説明しました。
一方で人間は、既存の発想や枠組みにとらわれず、まったく新しいアプローチにたどり着く能力において優位性があるとしています。
AIは膨大なデータから最適解を導き出すことは得意ですが、「そもそもの問いを変える」「前例のないアプローチを生み出す」ことは苦手です。
「二刀流競争力」との深い共鳴
実は、この3つのスキルは、先日ご紹介した脳科学者・茂木健一郎さんの「二刀流競争力」の考え方と深く共鳴しています。
茂木さんは、AI時代に必要なのは「1000倍速の効率化」と「1倍速の人間らしさ」の両方を使いこなすことだと語りました。
マーキュリーブログ「AI時代に問われる『二刀流競争力』と1倍速の世界での本番力」、2026年1月4日
生成AIを使えば、論文の要約も資料作成も100倍速、1000倍速で完了します。しかし、面接やプレゼンテーション、クライアントとの対話は「1倍速」で進みます。その場でごまかしは効かない。その人の今までのものが、リアルタイムで問われる。
スターンフェルズ氏が言う「志を抱く能力」は、まさに1倍速の世界で発揮される力です。ビジョンを語り、相手の目を見て、熱意を伝える。AIがどれだけ優秀な資料を作っても、それを「信じてもらう」のは人間の仕事です。
「判断力」もまた、1倍速の世界で問われます。AIが提示した複数の選択肢を見て、「うちの会社にはこれが合う」「この地域の文脈ではこちらが適切だ」と決断を下すのは、経営者やリーダーの役割です。
そして「真の創造性」。茂木さんが言う「生きがい」や「経験価値」とも通じる部分があります。効率だけを追求するのではなく、「そもそも何を実現したいのか」「どんな価値を生み出したいのか」という問いを立てる力。これは人間にしかできません。
日本企業に広がるAIエージェント導入の波
マッキンゼーの事例は、大企業だけの話ではありません。日本でも、AIエージェント導入の波は急速に広がっています。
ソフトバンクは2025年6月に「1人100個のAIエージェント作成」というミッションを掲げ、わずか2ヶ月半で250万超のAIエージェントを作成しました。(Note【大企業の本気】ソフトバンク『1人100個AIエージェント』、2025年12月28日)
パナソニックでは、AIエージェントの活用により2023年6月から2024年5月の1年間で18.6万時間の業務削減を達成しています。(ZDNet Japan、2024年6月25日)
イオンリテールは2025年6月から約390店舗にAIアシスタントを導入し、店舗スタッフの問い合わせ対応を効率化しています。(Cloud Watch Impress、2025年5月15日)
2025年12月時点で、AIエージェントを導入済みの企業は35%、さらに44%が近く導入を計画中という調査結果も出ています。(BCGとMIT SMR共同調査、PR TIMES、2025年12月1日)
これは従来型AIの8年で72%、生成AIの3年で70%という採用率と比較しても、わずか2年で35%への到達は「異例の速さ」です。
中小企業・地方自治体が直面する「現実」
ここで、中小企業や地方自治体の経営者・担当者の方に問いかけたいことがあります。
「あなたの組織では、AIをどのように活用していますか?」
正直に言えば、多くの中小企業や地方自治体では、まだ「ChatGPTを個人的に使っている社員がいる」程度ではないでしょうか。組織としての活用方針は定まっておらず、業務プロセスへの組み込みも進んでいない。
これは決して批判ではありません。むしろ、今がチャンスだということです。
マッキンゼーの調査「State of AI 2025」によると、88%の組織がAIを最低1領域で導入しているものの、大多数はまだ実験・パイロット段階で、エンタープライズレベルの実質的成果は限定的です。(McKinsey「The State of AI」、2025年11月)
つまり、大企業も含めてほとんどの組織が「まだ手探り」の状態なのです。
中小企業や地方自治体には、大企業にはない強みがあります。意思決定のスピード、組織の柔軟性、地域に根ざした独自の文脈。これらを活かせば、AI活用において大企業を追い越すことも可能です。
人間とAIの協働を前提とした業務設計
では、具体的に何から始めればよいのでしょうか。
マッキンゼーは「ワークフロー全体をAI前提で再設計する」ことを推奨しています。単なる「作業の自動化」ではなく、人間とAIがそれぞれの強みを活かす形で業務プロセスを根本から見直すアプローチです。
(マッキンゼー「Seizing the Agentic AI Advantage」、2025年8月)
この考え方を、私たちは中小企業向けに以下の6段階に整理して提案しています。
段階1:問いとゴール設定(人間が担当)
「何を実現したいのか」「どんな成果を求めているのか」を明確にする。これはスターンフェルズ氏が言う「志を抱く能力」そのものです。
段階2:インプット収集(AI+人間)
必要な情報をAIで効率的に収集しつつ、人間が「何が必要か」を判断する。
段階3:仮説構築(AI)
AIに複数の選択肢やアイデアを出させる。ここはAIの得意領域です。
段階4:判断と選択(人間が担当)
AIが提示した選択肢の中から、自社や地域の文脈に合ったものを選ぶ。これが「判断力」です。
段階5:アウトプット生成(AI+人間)
資料作成やコンテンツ制作をAIが支援し、人間が仕上げる。
段階6:最終決定(人間が担当)
責任を持って最終決定を下す。これは人間にしかできません。
この6段階を意識するだけでも、「AIに任せる部分」と「人間が担う部分」の切り分けが明確になります。
地方自治体の課題解決に向けて
私たちマーキュリープロジェクトオフィスは、長野県信濃町においてAIを活用した地域課題解決プロジェクトを支援しています。
具体的には、農業分野での自動草刈りロボットの実証実験や、町役場の公式Webサイトや、移住推進サイト、観光施設でのAIチャットボット導入などに取り組んでいます。(信濃ロボティクスイノベーションズ合同会社)
ここで重要だったのは、「AIに何を任せ、人間は何に集中するか」を明確にしたことです。
例えば、観光施設のAIチャットボットは、よくある質問への回答や予約受付といった「繰り返しの作業」を担当しています。これにより、スタッフは「お客様との対話」や「新しい体験プログラムの企画」といった、1倍速の世界での仕事に集中できるようになりました。
農業分野でも同様です。草刈りという「地味でワクワクしない繰り返しの作業」をロボットに任せることで、農家は「収益につながる作業」や「新しい作物への挑戦」に時間を使えるようになります。
これはまさに、マッキンゼーが言う「より複雑な課題」への集中です。
採用・人材戦略の変化を先取りする
スターンフェルズ氏は、AI導入によって「人材の見極め方」も変わりつつあると語りました。
「どの学校を卒業したかは、これまでほど重視されなくなるべきだ」
技術的なバックグラウンドを持つ人材については、学歴ではなく、GitHub(エンジニアが自身の成果を公開しているプラットフォーム)を見るべきだと強調しました。
「実際の成果や実力を見ましょう。そうすることで、従来とは異なる経路で経験を積んできた人たちが、労働市場に参入できるようになるのではないでしょうか」
これは中小企業にとって朗報です。大企業が学歴や経歴を重視する中、中小企業は「実際に何ができるか」で人材を見極めることができます。
また、マッキンゼーは過去20年の採用データをAIで分析した結果、興味深い発見をしています。「完璧な成績」よりも「失敗から回復したレジリエンス」を持つ人材の方が、パートナー(経営幹部)になる確率が高いことがわかったのです。(Business Insider、2026年1月9日)
失敗を恐れず挑戦し、そこから学んで立ち直る力。これもまた、AIには代替できない人間のスキルです。
就職活動の現場で起きている変化
ここで、もう一つ注目すべきデータがあります。
就職活動におけるエントリーシート(ES)への生成AI利用率が急上昇しています。マイナビの調査によると、2026年卒の大学生の就活におけるAI利用率は66.6%に達しています。(マイナビ「2026年卒 大学生キャリア意向調査4月 就職活動におけるAI利用について」、2025年5月26日発表)
茂木健一郎さんが指摘していたように、「書く側も生成AIを使い、読む側も生成AIを使う」状況が、現実のものとなっています。
その結果、企業は「早く面接しよう」という流れになっている。文章だけでは本当のことがわからないから、早く会って、その人を見極めようとしているのです。
これは採用する側にとっても、される側にとっても重要な示唆です。
採用する側:エントリーシートの内容よりも、面接でのコミュニケーション能力や、実際のスキル・経験を重視する方向へ
採用される側:文章力よりも、対面でのプレゼンテーション能力や、実績を示せるポートフォリオの準備が重要に
「志」を伝えるために必要なこと
ここまで読んで、こう思われた経営者の方もいらっしゃるかもしれません。
「志を抱く能力が大事なのはわかった。でも、その志をどうやって社員や求職者、顧客に伝えればいいのか?」
まさにここが、AIだけでは解決できない課題です。
志を言語化し、ビジュアルで表現し、ストーリーとして伝える。これは「真の創造性」が問われる領域であり、同時に専門的なスキルが必要な領域でもあります。
例えば、採用活動において「うちの会社の魅力」を伝えるとき、単に条件を並べるだけでは求職者の心には響きません。会社の歴史、経営者の想い、社員の日常、仕事のやりがい。これらを丁寧に引き出し、求職者に「この会社で働きたい」と思ってもらえる形に仕上げることが必要です。
社内コミュニケーションも同様です。経営者の志が社員に伝わっていなければ、組織は同じ方向を向けません。社内報やポッドキャストを通じて、経営者の考えを定期的に発信することで、組織の一体感が生まれます。
中小企業が今すぐ始めるべき3つのアクション
最後に、中小企業の経営者・担当者の方が今すぐ始められるアクションを3つ提案します。
アクション1:「志」を明確にし、言語化する
AIを導入する前に、「自社は何を実現したいのか」「どんな価値を提供したいのか」を明確にしてください。これがなければ、AIはただの便利ツールで終わってしまいます。
低軌道を目指すのか、月を目指すのか、火星を目指すのか。その選択は、経営者にしかできません。
そして、その志を社員や顧客、求職者に伝えるための「言葉」と「形」を整えてください。採用サイト、会社案内パンフレット、社内報など、志を伝えるツールは複数あります。
アクション2:業務を「6段階」で見直す
現在の業務プロセスを、先ほど紹介した6段階で整理してみてください。どの部分がAIに任せられるか、どの部分に人間が集中すべきかが見えてきます。
まずは1つの業務から始めて、徐々に範囲を広げていくのがおすすめです。
アクション3:「1倍速の時間」を確保し、発信する
AIで効率化した時間を、何に使うかを決めてください。
クライアントとの対話、チームメンバーとのコミュニケーション、新しいアイデアを考える時間。これらの「1倍速の時間」こそが、AIには代替できない価値を生み出す場です。
そして、その「1倍速の時間」で生まれた価値を、社内外に発信してください。経営者の想いを伝える社内報、社員の声を届けるポッドキャスト、会社の魅力を伝える採用コンテンツ。これらは、AIが自動生成するものではなく、人間が丁寧に作り上げるものです。
私たちの考え方
マーキュリープロジェクトオフィスは、20年以上にわたってクリエイティブとテクノロジーの領域で仕事をしてきました。生成AIの活用にも積極的に取り組んでいます。
しかし私たちは、AIを「人間を置き換えるもの」とは考えていません。
マッキンゼーですら、4万人の人間と2万のAIエージェントが「共存」しています。AIがコンサルタントを置き換えたのではなく、コンサルタントが「より複雑な課題」に取り組めるようになったのです。
私たちがフルサービス型のクリエイティブファームとして中小企業や地方自治体の皆さまにご支援できるのは、「志を抱く能力」「判断力」「真の創造性」を活かすための土台づくりです。
「志」を形にするサービス
採用情報Webサイト、採用情報パンフレット、会社案内など、あなたの会社の志を求職者や顧客に伝えるツールを制作します。クライアントの内部に秘めた魅力を引き出し、言葉とビジュアルで表現することが私たちの強みです。
「判断」を支えるサービス
マーケティングデータの分析、Webサイトのアクセス解析など、経営判断に必要なデータを提供します。
「創造性」を発信するサービス
社内報制作、社内ポッドキャスト制作など、組織内のコミュニケーションを活性化するコンテンツを企画・制作します。経営者の想いを社員に届け、社員の声を経営に活かす仕組みづくりをサポートします。
AI実装推進とセットで対応
これらのサービスは、生成AI導入支援とセットで提供可能です。AIで効率化できる部分は効率化し、その結果生まれた時間を、クライアントとの対話や、より深い課題理解に充てる。これが私たちの「二刀流」です。
生成AIの導入支援、Webサイト制作、採用コンテンツ制作、社内コミュニケーション支援について、お気軽にご相談ください。
本記事の情報は2026年1月13日時点のものです。
※この記事は、信濃ロボティクスイノベーションズ合同会社の開発するマルチAIアシスタント「secondbrain」を利用して執筆しています。
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