【2026年最新】ガバメントAI「源内」とは?地方自治体が今から準備すべきAI活用戦略
デジタル庁が開発した行政向け生成AI基盤「源内(げんない)」が、2026年度以降、地方自治体への展開を予定しています。人口減少と少子高齢化による行政職員の担い手不足が深刻化する中、生成AIの活用は公共サービス維持のための必須施策として位置づけられています。
本記事では、源内の概要と特徴、国産LLM公募の背景、そして地方自治体が今から準備すべきことを解説します。
源内とは何か?日本初の行政向けAI基盤
源内の定義と位置づけ
源内は、デジタル庁が内製開発した「行政職員全員が利用できる生成AI利用環境」です。Amazon Web Servicesのオープンソースプロジェクト「Generative AI Use Cases(GenU)」をベースに、デジタル庁AI班が行政実務に特化した拡張開発を行いました。
「源内」という名称には2つの由来があります。1つは生成AIの英語略称「GenAI」の読み方「ゲンナイ」、もう1つは江戸時代の発明家・平賀源内の精神です。多様な生成AIアプリケーションの発明が集まることへの願いが込められています。
(出典:デジタル庁note「ガバメントAI、プロジェクト『源内』の構想紹介」2025年11月10日)
異例の高い利用実績
源内は2025年5月にデジタル庁全職員(約1,200人)向けに本格運用を開始しました。その後の利用実績は以下の通りです。
- 利用率:約80%(950人が実際に利用)
- 3ヶ月間の利用回数:延べ65,000回以上
政府内での生成AIツール導入において、約80%という利用率は異例の高さです。これは源内が実際の業務に役立つ実用的なツールであることを示しています。
(出典:axconstdx.com「デジタル庁『源内』で判明!政府AI活用の衝撃格差と8割が実感」2025年9月12日)
具体的な効率化事例
農林水産省での活用事例が報告されています。
課題:米の生産意向に関する大規模アンケート調査(8,000件以上の回答)の分析
- 従来の所要時間:職員一人で約2ヶ月間
- AI活用後:約3日間に短縮
- 効率化の倍率:約20倍の高速化
この事例は、AI活用が机上論ではなく、実際の行政業務における生産性向上を実証しています。
源内の技術的特徴:複数LLMを使い分ける設計
単一のAIではなく「LLM統合基盤」
源内の最大の特徴は、単一のLLMエンジンではなく、複数のLLMを統合して使う「LLM統合基盤」として設計されていることです。職員は業務内容に応じて最適なAIを選択できます。
現在搭載されているLLM(2025年12月時点):
LLM | 提供企業 | 特徴 |
Amazon Nova Lite | Amazon Web Services | 軽量・高速 |
Claude 3 Haiku | Anthropic | バランス型 |
Claude 3.5 Sonnet | Anthropic | 高性能・複雑タスク向け |
OpenAI LLM | OpenAI | 最先端・汎用性 |
PLaMo翻訳 | Preferred Networks(日本) | 日本語翻訳特化・行政対応 |
(出典:IT media「デジタル庁、庁内生成AI基盤『源内』にOpenAIのLLMを追加」2025年11月20日)
マイクロサービス型アーキテクチャ
源内は以下の4層構造で設計されています。
- 基盤レイヤー:ガバメントクラウド上のコンピューティングリソース
- AIエンジンレイヤー:複数LLMを選択・実行可能な基盤
- APIレイヤー:府省庁の既存システムとの連携インターフェース
- 行政実務特化アプリレイヤー:業務に特化した20種類以上のAIアプリケーション
重要な特徴として、行政実務用AIアプリはマイクロサービスとして独立構築されており、AWSに限定されず、Google CloudやAzureなど複数のクラウド環境で開発可能です。新しい国産LLMの追加も、外部のマイクロサービスとして追加できるモジュール設計となっています。
(出典:デジタル庁note「ガバメントAI、プロジェクト『源内』の構想紹介」2025年11月10日)
なぜ国産LLMを公募するのか?
機密情報の取り扱いという絶対的要件
2025年12月1日、デジタル庁は国産LLMの公募を開始しました。すでに海外製の高性能LLM(OpenAI、Anthropic等)が搭載されているにもかかわらず、あえて国産LLMを公募する理由は「セキュリティと信頼性」にあります。
政府職員は「機密性2情報」を扱う必要があります。機密性2情報とは、内閣府・総務省のサイバーセキュリティ基本戦略で定義される情報区分であり、漏洩時に国民の権利や行政事務の遂行に支障を及ぼすおそれのある情報を指します。
海外製LLMの場合、テキスト入出力がクラウド上で保管・処理され、データが米国サーバーを経由するリスクがあります。一方、国産LLMであれば、ガバメントクラウド内で完全自己完結処理が可能であり、データが日本国内で処理・保管されます。
(出典:デジタル庁「ガバメントAIで試用する国内大規模言語モデル(LLM)の公募について」2025年12月1日)
日本語と行政文書への特化
海外製LLMは日本語の汎用的対応はできますが、行政実務に特化した最適化には限界があります。
海外LLMが対応困難な行政特有の要素:
- 法令用語・定型句(「〜に基づき」「〜の限度において」など)
- 公文書の作成様式(である調、敬語表現の使い分け)
- 統計データの記述方式
- 公文書特有の冗長性や厳密性の要求
例えば、PLaMo翻訳は行政文書に特有の日本語表現や記述様式に対応して開発された国産LLMであり、長文翻訳でも「繰り返しや欠落、表記のゆらぎが少なく、流暢な翻訳を生成する」ことが特徴です。
(出典:Preferred Networks「PFNのPLaMo翻訳、ガバメントAI『源内』で利用開始」2025年12月1日)
「全面国産化」ではなく「役割分担型ハイブリッド運用」
政府の戦略は、海外LLMを全て国産に置き換えることではありません。実際には「役割分担型ハイブリッド運用」が採用されています。
業務カテゴリー | 想定されるLLM | 理由 |
法令検索・解釈(行政特化) | 国産LLM | 日本語・法令特化性能が重要 |
機密情報を扱う業務 | 国産LLM | セキュリティ最優先 |
グローバル知識が必要な政策企画 | 海外LLM | 最先端情報・多言語性能が重要 |
リサーチ・分析の大規模処理 | 複数モデル使い分け | タスク最適化 |
(出典:note.com「デジタル庁×OpenAI―連携の全貌と”源内”戦略」2025年10月4日)
行政実務特化AIアプリケーション
Lawsy(ロージー):法令特化型Deep Researchツール
源内には、汎用型AIアプリ(チャット対話、文章作成、文章要約)に加えて、20種類以上の行政実務特化型AIアプリが提供されています。
その代表例が「Lawsy(ロージー)」です。
開発経緯:
- 2025年2月〜3月の「法令×デジタル」ハッカソンで開発
- 約130人が参加、28チームが作品開発
- ハッカソン最優秀賞を受賞
機能:
- 法令に関する質問を入力
- 生成AIが全法令データベースを検索
- 法令情報だけでなく、政策・判例・国会等の関連情報も統合して分析レポートを出力
効率化事例:
- 財政会計六法から特定条文を探す作業
- 従来:半日かかる
- Lawsy利用:2分で完了
- 効率化倍率:約180倍の高速化
(出典:デジタル庁ニュース「行政の未来を切り拓く。デジタル庁『AI班』の奮闘に密着」2025年10月8日)
その他の行政実務用AIアプリ
- 国会答弁検索AI:過去の国会答弁を瞬時に検索・参照
- 公用文チェッカーAI:文化庁・デジタル庁のガイドラインを反映した自動校正
- 業務マニュアル検索AI
- 政策立案支援AI
- 統計データ分析AI
地方自治体への展開スケジュール
詳細な実装タイムライン
時期 | 対象 | 内容 |
2025年5月 | デジタル庁 | 源内本格運用開始 |
2025年12月1日 | 全国 | 国産LLM公募開始(〜2026年1月30日) |
2025年12月中 | デジタル庁 | PLaMo翻訳導入 |
2026年1月以降 | 各府省庁 | 試験的利用開始(数百人規模) |
2026年2月〜3月 | 全国 | 国産LLM選定(公募審査) |
2026年度中(5月以降予定) | 全府省庁 | 本格展開(政府職員10万人超が利用可能に) |
2026年度以降 | 地方自治体 | 段階的展開開始 |
2027年度以降 | 地方自治体 | ライセンス契約を通じた本格提供 |
(出典:ITmedia「政府職員10万人超が生成AI基盤『源内』活用へ」2025年12月21日)
小規模自治体への特別支援体制
デジタル庁は「地方公共団体との共創」を掲げており、特に小規模自治体への負担軽減に重点を置いた設計になっています。
支援内容 | 実装方法 |
基本データ整備の一括提供 | デジタル庁が法令、通達等の基本データを用意 |
プロンプトテンプレート共有 | 汎用・特化型の雛形を全国の自治体で利用可能に |
品質管理ルール統一 | 全国共通の品質基準・監視体制を構築 |
ベストプラクティス横展開 | 効果の高いAIアプリを全国自治体間で共有 |
初期導入コスト低減 | 各自治体が独立構築する手間・経費を排除 |
また、総務省は2025年度末(2026年3月)までに、自治体向けの生成AI利用ガイドラインを発行する予定です。
(出典:axconstdx.com「デジタル庁『源内』で判明!政府AI活用の衝撃格差と8割が実感」2025年9月12日)
地方自治体が今から準備すべき5つのこと
源内の地方自治体への展開は2026年度以降ですが、導入効果を最大化するためには今から準備を始めることが重要です。
1. AI活用の目的と優先業務を明確化する
「AIを導入する」こと自体を目的にせず、「何を解決したいのか」を明確にしましょう。
検討すべき項目:
- 現在、職員の負担が大きい業務は何か
- 住民サービスで改善が求められている領域は何か
- 人手不足が深刻化している部署はどこか
例えば、農林水産省の事例のように、大量のアンケート分析や文書作成といった定型的だが時間のかかる業務が、AI活用の効果が高い領域です。
2. 業務プロセスとデータの棚卸しを行う
AIの出力品質は入力データに大きく依存します。源内導入前に、以下の整理を行っておくことをお勧めします。
- 業務フローの文書化:現在の業務プロセスを可視化
- データの整理:各業務で使用するデータの所在、形式、アクセス権限を把握
- ナレッジの集約:ベテラン職員のノウハウを文書化
3. 職員のAIリテラシーを高める
デジタル庁のAI班責任者・大杉直也氏は「行政職員の全員がAIエンジニアだというのが理想の世界」と述べています。これは、各行政分野の専門家が自らAIを活用・改善できる環境を目指すものです。
(出典:デジタル庁ニュース「行政の未来を切り拓く。デジタル庁『AI班』の奮闘に密着」2025年10月8日)
職員研修の検討事項:
- 生成AIの基本的な使い方と限界の理解
- プロンプト(AIへの指示)の書き方
- AIの出力結果の検証方法
4. セキュリティポリシーを見直す
源内は機密性2情報を扱える設計になっていますが、自治体側でもセキュリティポリシーの整備が必要です。
検討すべき項目:
- どのような情報をAIに入力してよいか
- 出力結果の取り扱いルール
- 住民の個人情報の扱い
AI利用に関するセキュリティポリシーの具体例:
情報の種類 | AI入力可否 | 理由・注意点 |
公開済みの条例・規則 | 可 | 既に公開されている情報のため |
住民の氏名・住所 | 不可 | 個人情報保護の観点から |
匿名化された統計データ | 可 | 個人が特定されない形式であれば利用可能 |
内部の検討資料(未公開) | 要検討 | 情報の機密レベルに応じて判断 |
他自治体からの照会文書 | 不可 | 相手方の許可なく利用は不適切 |
5. 先行事例を収集し、効果測定の指標を設定する
導入効果を適切に評価するために、現在の業務にかかる時間やコストを測定しておくことが重要です。
測定すべき指標の例:
- 特定業務の所要時間(時間/件)
- 住民からの問い合わせ対応時間
- 文書作成にかかる時間
- 職員の残業時間
ケーススタディ:地方自治体のAI活用イメージ
以下は、地方自治体における典型的なAI活用シナリオを示した仮想事例です。実際の効果は業務内容や導入方法により異なります。
事例1:住民問い合わせ対応の効率化(人口10万人規模の市)
課題:
- 住民からの電話・窓口での問い合わせが年間約30,000件
- 担当職員が回答を調べる時間が長く、待ち時間への苦情が発生
- ベテラン職員の退職により、回答品質にばらつきが出始めている
想定されるAI活用:
- 法令・条例・過去の対応事例をAIが検索・要約
- 職員がAIの回答を確認・修正して住民に伝える
- 複雑な案件は専門部署へ適切に引き継ぎ
期待される効果:
- 1件あたりの対応時間が平均15分から8分程度に短縮
- 回答の品質・一貫性が向上
- 新人職員でも経験者と同等の対応が可能に
事例2:計画書・報告書作成の効率化(町村規模の自治体)
課題:
- 国や県への報告書作成に多くの時間を費やしている
- 少人数の職員で複数の計画策定を同時進行
- 過去の計画書を参照しながらの作成作業が煩雑
想定されるAI活用:
- 過去の計画書や報告書のデータベース化
- AIによる類似事例の検索と下書き作成支援
- 統計データの自動集計と文章化
期待される効果:
- 報告書作成時間が従来の3分の1程度に短縮
- 過去の記載との整合性チェックが容易に
- 職員は内容の精査と政策判断に集中可能に
事例3:観光・産業振興の情報発信強化(観光地を抱える自治体)
課題:
- 多言語での情報発信が追いつかない
- SNSやウェブサイトの更新頻度を上げたいが人手が足りない
- 地域の魅力を効果的に伝えるコンテンツ作成に苦慮
想定されるAI活用:
- 観光情報の多言語翻訳(PLaMo翻訳等の活用)
- SNS投稿の下書き作成
- 観光客からの問い合わせへの自動応答
期待される効果:
- 多言語コンテンツの作成・更新が迅速化
- 情報発信の頻度が向上
- 観光案内所の負担軽減
※上記は典型的な活用シナリオを示した仮想事例です。実際の効果は業務内容、データの品質、導入方法、運用体制などにより大きく異なります。導入前に専門家への相談をお勧めします。
日本のAI国家戦略の全体像
体制の強化
2025年12月23日に政府は初の「人工知能基本計画」(AI基本計画)を内閣で閣議決定しました。AI法に基づくこの基本計画により、内閣総理大臣を本部長とする「人工知能戦略本部」が設置され、政府全体のAI政策を統轄する司令塔機能が確立されています。
(出典:内閣府「人工知能基本計画 令和7年12月23日 閣議決定」/ 首相官邸「令和7年12月23日(火)定例閣議案件」)
投資の加速
高市総理は1兆円超のAI投資を表明し、フィジカルAI・国産基盤モデル開発に注力する方針を発表しています。
(出典:innovatopia.jp「10万人のガバメントAI活用と200人AISI体制へ」2025年12月21日)
「信頼できるAI」という基本方針
日本政府のAI基本計画は「信頼できるAIによる日本再起」を掲げています。行政が使用するAIが国産であることは、透明性の感覚を高め、情報セキュリティへの配慮を明確にし、国内産業振興への貢献を示すものです。
マーキュリーの自治体向けAI活用支援サービス
マーキュリープロジェクトオフィスでは、地方自治体様向けにAI活用支援サービスを提供しています。
私たちの実績と強み
当社は、長野県信濃町をはじめとする地方自治体との協働実績があります。
Symphony Base(回答生成エンジン)の導入実績:
- 信濃町役場のWebサイトでのAIチャットボット運用
- 長野県内のキャンプ場での問い合わせ対応自動化
- 複数の言語生成AIを組み合わせ、組織が責任を持てる回答を生成
また、特定非営利活動法人Nature Serviceでは「事業再生型指定管理『Uplift』」のコンセプトを提唱し、公共施設の事業再生に取り組んでいます。信濃ロボティクスイノベーションズ合同会社では、「田舎テック」として地方の社会課題をテクノロジーで解決する取り組みを推進しています。
提供サービス
- AI活用診断:貴自治体の業務における最適なAI活用ポイントを診断
- 業務プロセス分析:AI導入に向けた業務フローの可視化と改善提案
- 職員研修:生成AIの基礎から実践的な活用方法まで
- システム構築支援:既存システムとのAPI連携、チャットボット構築
- 運用支援:継続的な効果測定と改善提案
源内導入に向けた準備支援
2026年度以降の源内展開に先駆けて、以下の準備支援を行っています。
- 現状業務の棚卸しと AI活用可能性の評価
- データ整理・ナレッジ集約の支援
- 職員向けAIリテラシー研修の企画・実施
- セキュリティポリシー整備のアドバイス
- 先行事例の情報提供
「源内が来たときにすぐに活用できる状態を作りたい」「自治体でのAI活用について相談したい」という方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
本記事の情報は2026年1月5日時点のものです。ガバメントAIの展開スケジュールや機能は変更される可能性がありますので、最新情報はデジタル庁の公式発表をご確認ください。
※この記事は、信濃ロボティクスイノベーションズ合同会社の開発するマルチAIアシスタント「secondbrain」を利用して執筆しています。
ご興味をお持ち頂けた方は、ぜひ下記のフォームからお問い合わせください!




