言葉の問題は時として権力争いを表面化させ、グローバル企業を分裂に追い込むことがある

社内の円滑なコミュニケーションを図るために、英語を公用語とするグローバル企業は次第に増えています。しかし、英語の公用語化は、時として思わぬ方向に進むことがあります。今回は、グローバル企業の言葉の問題に詳しいハーバード・ビジネススクール准教授、セダール・ニーリーさんの研究について、こちらの記事をもとにご紹介したいと思います。

グローバル企業では多国籍社員間の言葉の壁を克服するために、英語を公用語とすることがあります。しかし、言葉の壁を克服するための公用語化が、逆に社員間の溝を深めるケースがあるということを、ニーリーさんの研究結果が示しています。

研究の対象となったのはドイツを本拠地とするハイテク企業。アメリカ人、ドイツ人、インド人が働いており、ドイツ国内だけでなくアメリカとインドにも国籍混合のソフトウェア開発チームがありました。英語を社内公用語としたのはニーリーさんが調査を開始する2年前からで、英語の公用語化に不安を感じなかったアメリカ人とインド人とは対照的に、ドイツ人は不安を募らせていたそうです。

この企業を調査してわかったのは、同じ国籍混合チームであっても、言葉の問題が別の問題を生じさせるチームとそうでないチームがあるということでした。

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「ドイツ人とアメリカ人」チーム内でのこと。ドイツ人は第二言語である英語に不安感を抱きながらも日々業務をこなしていました。しかし、一部のドイツ人メンバーが会議中にたびたびドイツ語で会話を始め、それがアメリカ人を苛立たせていました。さらに、ドイツを本拠地とする企業ということもあり、アメリカ人は自分たちの知らない情報をドイツ人は握っているのではないかと猜疑心までも抱くようになりました。結果的に、それぞれに溜まったフラストレーションがぶつかり合うような形で両者の間に溝が生じ、同じ開発チームでありながら内部分裂してしまったのです。

一方、「ドイツ人とインド人」から成る別の開発チームを調査した結果、両者の間に特に溝は生じていませんでした。上記チーム同様、母国語での会話が頻繁に発生していたにも関わらず、です。

この違いは一体どこにあったのでしょうか?

浮かび上がってきたのは、支配権を巡る争いの有無でした。「ドイツ人とアメリカ人」チームには、自国のマーケットに合致する製品を開発したいというそれぞれの思惑が働いていたこともあり、地位や権力を巡る争いが存在していました。そこに言語の問題に起因するフラストレーションや感情が加わり、内部分裂を引き起こしたのです。

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「ドイツ人とインド人」チームには、こういった争いは存在しませんでした。その理由はインド人が比較的若く業界に精通していなかったこともあり、インド人がドイツ人に対し従属的な立場をとっていたためです。それゆえ、両者の間に溝ができるほど感情が爆発することはなく、分裂するような事態には至りませんでした。

ニーリー氏はグローバル企業が直面する言葉の問題やそれに付随する課題をこんな風に表現しています。

「それはまるで火山のようだ。何かが引き金となり、そして突然爆発する。」

言葉の問題は単体で存在しているわけではなく、周りに潜むさまざまな問題と密接に関連しています。グローバル企業は言葉の問題の克服とともに、水面下に潜む問題、―今回のケースでは地位や権力を巡る争い―、に対応することも経営課題の一つとして認識する必要があるということなのです。

《参考URL》
Language Wars Divide Global Companies|Harvard Business School Working Knowledge
Kim Girard


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